2021年3月28日、乃木坂46「9th YEAR BIRTHDAY LIVE〜2期生ライブ〜」で堀未央奈が乃木坂46を卒業した。
堀未央奈と生駒里奈の卒業には共通点が多くあり、また二大エースとして長年乃木坂を牽引してきた白石麻衣・西野七瀬と卒業に対するスタンスが異なるように感じたため、それについてまとめてみることにした。
この卒業に対するスタンスの違いは卒業ソロ曲にも表れているので今回は卒業ソロ曲を中心に堀未央奈の卒業について考察していきたい。
overture
まず、大前提として卒業ソロ曲の作詞は他の乃木坂楽曲と同様に秋元康が行っているため、卒業曲から卒業メンバーの心情を読み取とろうとする行為には意味がないと言える。
しかし、橋本奈々未の卒業ソロ曲「ないものねだり」は橋本自身が書き溜めていた日記を参考にしながら秋元康が作詞した話などもあるように、ある程度卒業メンバーのパーソナルに焦点を当てた作詞がなされていると推測出来るので卒業曲から卒業メンバーの心情を読み取ろうとする行為が一概に無意味であるとは言いきれない部分もある。
それでも、本人が作詞していない以上、この行為が陳腐なことであることに変わりはないので、「そういう楽しみ方もあるよね」ぐらいの感覚で読んで頂ければ幸いである。
逆に、白石麻衣自身が作詞した「じゃあね。」には当然白石の卒業に対する捉え方がそのまま反映されていると考えられる。
冷たい水の中
冷たい水の中
結論から述べると、堀未央奈と生駒里奈の卒業理由に大きく共通している部分は
「私がいなくても乃木坂はもう大丈夫」という責任感の解放から成された卒業ではなく「これ以上乃木坂にいたら自分はもう成長できない」という自己成長のマインドによる卒業であるという点だ。
これはtwitterで呟いた通りである。
堀未央奈の卒業ソロ曲「冷たい水の中」の内容にもそれは色濃く反映されている。
今の私の力で何ができるのでしょうか?
乃木坂46「冷たい水の中」
わからないまま
ぬるま湯の中にいてはいけないと
決心した日
これは1番のサビだが、当然この歌詞が意味しているものは
ぬるま湯=乃木坂
決心した日=卒業の決意
である。
もう一度奮い起こして歩き出したい
乃木坂46「冷たい水の中」
新しい自分のために
さあ未来へ
目を覚まそう
2番のサビも同様である。
自分が次のステップへと進み成長する(=新しい自分)ためには、自分を奮い起こして卒業を決意しないといけないという内容になっている。
Against
ここで生駒里奈のラストセンター曲「Against」の内容をみていきたい。
「Against」は一期生曲であり、正確には生駒の卒業ソロ曲ではないが明らかに生駒への当て書きとなっているのでここで取り扱う。
このままここに居続けるのは
乃木坂46「Against」
誰のためにもならない
新しい道を切り拓いて
立ち向かうんだAgainst
この曲も「冷たい水の中」と同様、変化の必要性を訴えた内容になっており、それが自分のためにもグループのためにも良いと言っている。
この1番のサビでは、自分自身というよりはグループの更なる成長のために役目を終えた自分は早く退場するべきだという意味合いの方が強いように感じられる。
居心地の良さ甘えていたら
乃木坂46「Against」
なにも奇跡は起きない
日向の中は暖かいけど
歩き出したいAgainst
2番のサビでは自分の成長のためには次のステップへ進むことが必要だと述べている。
この部分は「冷たい水の中」とほぼ同じ構成になっており、
生駒も堀も
日向の中=ぬるま湯=乃木坂
は居心地がいいがそこに居続けることは自己成長を妨げる甘えであると捉え
歩き出したいAgainst=さあ未来へ目を覚まそう=乃木坂を卒業
という結論に至ったという歌詞構成になっている。
このように「冷たい水の中」と「Against」を比較してみると非常に似ている部分が多いことが分かる。
じゃあね。
じゃあね。
生駒と堀だけを例に出しても分かり辛いので他の卒業メンバーの卒業ソロ曲とも比較していきたい。
まずは白石麻衣の卒業ソロ曲「じゃあね。」
この曲は先にも述べたように唯一メンバー自身が作詞した曲であり、この曲からは白石の卒業に対する考え方を垣間見ることが出来るだろう。
泣いてないって坂の途中で
乃木坂46「じゃあね。」
さよならとありがとう。
今までの思い出を振り返るような1番の歌詞。
サビでは別れを惜しむ気持ちと今までの感謝が綴られている。
時計の針戻せたらいつのどこに戻したいかな?
乃木坂46「じゃあね。」
出会いの日かなもっと前かな
でもいいの今以上はないから
振り向かないで行くけど
それはあなたのこと好きだから
2番では具体的な思い出を幾つか例にあげ今までの活動を振り返る。
そして卒業を決意したが、それでもメンバーのことはこれからもずっと信頼しているというような内容にまとめられている。一期生が良く使う所謂「卒業しても乃木坂」というやつである。
泣いてないで坂を登って
乃木坂46「じゃあね。」
ただ、らしく歩こう
さよならをありがとう
ラストの大サビ。
ここでも自身が別れを惜しむ気持ちと、別れを惜しんでくれた仲間への感謝で締められている。
つまり、「じゃあね。」は全体的に、卒業に際して今までの活動を振り返り仲間との別れを惜しむ気持ちと仲間やグループへの感謝に主題が置かれた曲になっている。
つづく
次に白石麻衣と双璧をなしWエースとしてグループを牽引してきた西野七瀬の卒業ソロ曲「つづく」
つづく終わりじゃないよそばにいなくても
乃木坂46「つづく」
そういつも想ってる
つづく僕たちの未来は
あの日見た夢の待ち合わせ
また会おう
この曲は全体として、卒業という既成事実が存在しそれをどう受け入れるかというところに主題が置かれている。
サビにあるように、卒業し離れ離れになったとしても私たちは繋がっているという内容の曲であり、この曲も先程の「じゃあね。」と同様に所謂「卒業しても乃木坂」というやつである。
時々思い出してください
最後に初代キャプテン桜井玲香の卒業ソロ曲「時々思い出してください」
この曲は最初から最後まで桜井玲香の気持ちを代弁したようような歌詞になっており明らかな桜井への当て書きである。
全てに桜井の卒業に対する捉え方が表れているように感じるが特に象徴する部分を一部抜粋。
守らなきゃいけない何かは
乃木坂46「時々思い出してください」
次の世代へと繋げばいいと気づきました
あなたたちならば大丈夫
乃木坂46「時々思い出してください」
任せられるって確信して
敢えていうまでもなく、乃木坂を後輩たちへ託そうという決意の表れである。
キャプテンとして長年乃木坂を守ってきたが、もう自分がその役目を負わなくても大丈夫だという責任感からの解放が描かれている。
もう何も後悔はない
乃木坂46「時々思い出してください」
今まで本当にありがとう
私の背中を押してください
キャプテンとしての役目を終えたことを自覚し、思い残すことなく卒業を決意。
今までの感謝と自分の決断を応援して欲しいという別れの歌である。
白石、西野、桜井ともに卒業によるメンバーとの別れを惜しむ気持ちや今までの感謝、離れていてもずっと繋がっているという絆を主題に据えた卒業ソロ曲になっている。
初期センター
ここまで生駒・堀と白石・西野・桜井の卒業のスタンスについてまとめてきたが、そもそも曲名の時点でその色合いはかなり異なっている。
「じゃあね。」
「つづく」
「時々思い出してください」
卒業という別れを惜しみながらも今までの感謝を綴り、これからもずっと仲間だよという、いかにも卒業曲っぽいタイトルであり、実際に曲の内容もそのようなものであったのは今まで見てきた通り。
対して
「Against」
「冷たい水の中」
尖りまくりである。
仲間や自分が成長するためには、新しい世界へ自分の足で踏み込んで行かないといけないという使命感のようなものを感じる。
なぜ、生駒里奈と堀未央奈のスタンスが似ているのか。
堀は生駒への感謝の気持ちをことあるごとに表明しているように、生駒へ尊敬の念と感謝を強く抱いていることは明らかである。
堀未央奈は生駒里奈のマインドを継いでいる。
それはなぜか?
やはりこの2人が乃木坂において似た境遇を持っていることが全ての理由だと思う。
乃木坂46の結成当初から五作連続でセンターを務め暗闇の中をもがきながら進んできた生駒と、周り全員が一期生の中加入当初にいきなりセンターとして放り込まれた堀。
最初からとんでもない逆境に立たされてその中を生き抜いてきた2人である。
この2人にしか持ち得ない逆境に立ち向かってきた強さがこのような卒業曲の違いとして表れたのかもしれない。